ブックレビュー:News Diet(ニュース ダイエット)

画像引用元:サンマーク出版公式サイト

https://www.sunmark.co.jp/detail.php?csid=3860-6

Yahoo! ニュースをはじめとしたニュースサイトを見ていると、記事本文の下部や脇にそれ以上の面積を占める広告やおすすめ記事へのリンクが設置されていることは珍しくない。

文字数の限られた箇所では、なるべくクリックをさせようとテキストリンクの内容には興味喚起させる工夫がこらされており、クリックするとギャップを感じる内容であることも日常茶飯事である。

また、ニュースサイトからさらに別のニュースサイトへのリンクが巧妙に設置されており、リンクをクリックし続けて疲れ果てた末に本来の目的を忘れていたことに気づき、時間を浪費したことへの罪悪感に苛まれるのは誰しもが経験したことがあるのではないだろうか。

手に入る新聞は最初から最後まで目を通し「新聞の貪欲な読者だった」と自称する著者は、1990年代のインターネットの普及によって、絶え間なく更新されるニュースサイトのトップページのブラウジングRSSフィードポッドキャストの購読、ニュースレターの受信などを通して、ニュースはアルコールと同じくらい、もしくはそれよりも高いかもしれないことに気づく。

ニュースのおかげで私は世界をもっとよく理解できるようになっただろうか?よい決断ができるようになっただろうか?

と自問自答した末に、閲覧するニュースサイトの数・回数やRSSフィードの購読数を減らすもハイパーリンクを辿ったニュースサイトの閲覧をやめられず、最終的にはニュースと決別する。

この本には、著者の経験を通してニュースと決別するための具体的な方法、決別したことによって得られたメリット、ニュースの問題点などが述べられている。

自身は民放番組やCMの価値を感じられなくなり部屋の中で結構な場所を占有するテレビを処分して10年以上が経過するが、それによって必要な情報が得られなくなった実感は薄い。ニュースも能動的に特定のニュースサイト、YouTube番組、SNSなどを閲覧しており日常生活で支障はない。

しかしこれでもハイパーリンク経由して意図しないニュースを閲覧し始めてしまったり、油断するとおすすめされたコンテンツをダラダラと見てしまうこともある。この本を読んで、毎日訪問すると思ったウェブサイトのブックマークや、登録して滅多にのぞいていないRSSフィードのリストを一掃してみたくなった。

人生に与えられた時間には限りがあり、乱立したニュースサイトをすべてチェックすることは不可能である。芸能人の不倫や離婚を追いかけたり、メディアが作り上げる華々しい有名人の活躍や映えるネタと自分の人生を比べて落ち込むのは時間がもったいない。

あなたの人生における重要なこととニュースには、なんの関連もない

著者が述べているこの一言がとても印象的で心に刺さった。

電車に乗っているとついスマホでニュースサイトを見てしまう人、見境いなくニュースサイトを訪問して必要以上の時間を消費していることに悩んでいる人、妙なバイアスを感じたり不安を煽られるニュースに違和感を持っている人は一度読んでみることをオススメしたい。

ニュースを完全に断つことが極端で抵抗を感じる人のために、閲覧するニュースの数を厳選したり形態を工夫することも提案されている。翻訳も不自然が感じらない日本語で内容が頭に入りやすく、読み返す人のために重要なポイントが太字で示されている配慮もうれしい一冊である。